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​整形外科・神経外科

診療手順

受付→問診→整形外科的検査→レントゲン検査(必要に応じて血液検査・超音波検査・CT検査)→診断→治療

 

受付・問診:

 動物の種類、年齢、体重、性別、飼育環境、既往歴、現病歴などを問診票に記載していただきます。

整形外科的検査:

 歩き方を見た後、触診して痛みの程度やその部位を特定します。また、整形外科疾患と混同しやすい神経疾患や自己免疫疾患との鑑別を行います。

レントゲン検査:

 主に骨の評価を行います。

 ※来院した動物は、痛みや不安がある状態です。その状態の動物を横向きや仰向けに保定して行うのがレントゲン検査です。そのため、飼い主さんがご同意していただけた場合、鎮静剤を注射して動物がストレスをなるべく感じないようにレントゲン検査を実施することがあります。

超音波検査:

 靭帯や腱などの評価を行います。

診断:

 確定診断を出せることもあれば、特殊検査の追加や診断的治療、経過観察などを指示する場合があります。

治療:

 飼い主様と相談して外科手術もしくは内科的管理にて治療を行います。

痛みのケア
痛みのケア

私たち人間は、「痛み」を好むことはありません。

動物達は痛みに対して強いように思えますが、きっと「痛み」は好きではないと思います。

それどころか手術による痛みが続くとご飯が食べられない、動きたがらない、傷の治りが悪いなど、たくさんのデメリットを生じますし、私たち治療スタッフとしても手術後の動物が痛がっている姿を見ると胸が痛みます。

当院では「痛みのケア」を積極的に行い、手術・治療を施しています。

●周術期の疼痛管理について

当院では、麻酔前処置から術後管理までの痛みのケアを手術による痛みの程度を意識して以下の通りに行います。

痛みの程度について

主に以下の鎮痛剤を使用しています。

・麻薬性オピオイド:モルヒネ・フェンタニル

・NMDA受容体拮抗薬:ケタミン

・非麻薬性オピオイド:ブトルファノール・ブプレノルフィン・トラマドール 

・非ステロイド系抗炎症薬:メロキシカム・フィロコキシブ・ロベナコキシブ

・α2受容体作動薬:メデトミジン

・局所麻酔薬:リドカイン・ブピバカイン
以上の薬剤を術前・術中・術後の周術期に様々な経路(経口、皮下、筋肉内、静脈内、硬膜外、局所)を使用して
個々に必要な
「痛みのケア」を行っています。

周術期における疼痛管理

周術期に様々な薬剤を加えることで、手術時の痛みを「痛み」として感知させる前になるべく最小限のものにするように努めています。

なお、鎮痛薬以外に抗コリン薬やトランキライザーなどの麻酔前投与薬やプロポフォールやアルファキサロンといった麻酔導入薬なども組み合わせて安全な麻酔・手術を行っています。

変形性関節症や多発性関節炎といった手術適応ではない整形外科関連のペインコントロールや末期癌による痛み(癌性疼痛)に関しても積極的に治療しています。 詳しくは一度、当院までご連絡ください。

骨折治療について
骨折治療について

動物も人間と同じように骨折や脱臼をします。

原因として交通事故などの大きな外力によるものもありますが、日本では小型犬が主体となっているため、ソファや抱っこしている所からの落下といった比較的小さな外力でも生じることが多くなっています。

骨折や脱臼の治療は、ギプスなどの処置のみで済むケースもありますが、ほとんどのケースは全骨折や脱臼を生じますので、手術が必要となります。

当院における骨折治療は、動物のステータス、骨折の発生部位や分類などを考慮して「髄内ピン」「骨プレート」「創外固定器」を単独もしくは組み合わせて使用することで適当な固定力を得られるように施術しています。

●髄内ピン

0.8mm-5.0mmのステンレス製のピンを骨髄内に刺入して固定を行います。

長管骨だけでなく、若齢動物の骨盤骨折にも使用することがあります。

●骨プレート

ステンレス製もしくはチタン製の金属の板(プレート)と骨ネジ(スクリュー)を使用して固定を行います。

●創外固定器

ネジ山があるピンを骨に刺入し、皮膚の外で連結バーとクランプを使用して固定を行います。

●髄内ピンと骨プレートの併用(プレート-ロッド併用法)

●髄内ピンと創外固定器の併用法(リニア型創外固定TypeⅠa "tie in")

​骨折治療における最小侵襲手術(minimally invasive surgery MIS)

MISは、人医療では20年以上前から提唱されているコンセプトですが、軟部組織(皮膚や筋肉など)の侵襲を最小限にし、骨折部に対してもよけいな侵襲を加えないことで骨折治癒を促進させる方法です。近年、獣医療領域でも実施されるようになってきました。

当院では、症例に応じて創外固定法によるMISや最小侵襲骨接合術(minimum invasive plate osteosynthesis MIPO)を実施しています。

※単純骨折に対するプレート固定はopen reduction internal fixationを行っています。

●足根中足関節骨折亜脱臼

●橈尺骨粉砕骨折

前肢の疾患

●肩関節脱臼

上腕骨が内方に向かって脱臼することが多く(内方脱臼)、原因により先天性と外傷性に分類します。

近年では、トイプードルなどに先天性肩関節脱臼を呈している症例を多く見受けられます。

その治療は生活の質(QOL)を意識して、内科的管理もしくは肩関節固定術や切除関節形成術といった救済手術を提案することがあります。

外傷性肩関節脱臼では①外固定②人工支帯による関節制動術③人工靭帯による関節上腕靭帯再建術を実施しています。

前肢の疾患

●肘異形成(elbow dysplasia ED)

肘異形成は、肘突起癒合不全(ununited anconeal process UAP)、内側鈎状突起疾患(medial coronoid process disease  MCPD)骨軟骨症(osteochondrosis OCD)、関節軟骨の異常、肘関節不適合などの肘に成長異常をきたす疾患の総称です。

 

原因:EDの原因と発症に関しては不明な点が多く、MCPDやOCD、肘関節の不適合は、ラブラドール・レトリーバー、ゴールデン・レトリーバー、ジャーマン・シェパード、バーニーズ・マウンテンドッグなどの大型犬や超大型犬の若齢雄(雄:雌=2:1)に多くみられます。

症状:前肢の跛行は4-12ヶ月齢に始まり、数ヶ月間続きます。その程度は徐々に進行することが多く、また運動後に悪化することがよくあります。

診断:徹底した整形外科的検査、レントゲン検査、関節鏡検査、CT、MRIにより行います。

治療:若齢期になるべく早期の外科療法が最も優れた予後を得られていますが、進行した変形性変化をみる肘関節には内科的管理や尺骨骨切り術などによる内側鈎状突起への負担軽減の外科手術を実施しています。

最近では、犬だけでなく猫においてもEDを認める症例に遭遇する機会が増えました。

●橈尺骨骨折

比較的遭遇する頻度の高い部位の骨折です。

基本的には、骨プレートによる固定を実施しますが、ギプス固定や創外固定器を用いた固定を行うこともあります。

●手根関節脱臼

手根関節脱臼は、交通事故や高所からの落下により発生しますが、前腕手根関節(10-30%)、手根中央関節(22-50%)、手根中手関節(40-47%)に認められます。

手根の過剰伸展により 掌側の靱帯や線維軟骨の重篤な損傷を負った動物の治療に対しては、手根関節固定術が適応になります。

●中手骨骨折

中手骨骨折は、若齢の犬や猫で最もよく認められますが、不完全骨折、完全骨折、粉砕骨折があります。

ギプス固定による治療を実施することもありますが、以下の場合は外科手術をします。

①2本以上の骨折 ②第ⅢとⅣ中手骨の同時骨折 ③関節内骨折 

④骨折片の変位が顕著 ⑤第ⅡまたはⅤ中手骨底の骨折

後肢の疾患

股異形成(hip dysplasia HD)

病態:股異形成は、股関節の緩みや関節炎の原因となる遺伝性疾患です。遺伝的要素だけでなく、過剰な栄養補給や激しい運動などの環境因子により病態を悪化させると言われています。

好発犬種:ゴールデン・レトリーバー、ラブラドール・レトリーバー、ジャーマン・シェパード、バーニーズ・マウンテンドッグ、グレート・ピレニーズなどの大型~超大型犬に多くみられます。

診断:4ヶ月~1歳齢に異形成症による痛みが認められます。その際、股関節の緩みがある場合が多いため、触診(Ortolani's sign )によってその緩みを確認します。レントゲン検査では、緩みの程度を知ることが可能であり(Nonberg法)、また変形性関節疾患の有無も確認します。

後肢の疾患

治療:

内科的管理

 非ステロイド性抗炎症薬やサプリメントの投与、体重管理、運動制限、リハビリテーションなどを行います。

外科治療 

①若齢期恥骨結合固定術(juvenile pubic symphysiodesis  JPS) ~20週齢まで

 恥骨結合の成長板を電気焼灼して成長板の早期閉鎖を促すことで、成長に伴い寛骨臼が大腿骨背側方向に回転して亜脱臼した大腿骨頭を覆うようになる術式です。

②三点骨盤骨切り術(triple plevic osteotomy  TPO) 6~12ヶ月齢まで

 腸骨・坐骨・恥骨の3ヶ所の骨切り術を実施して、寛骨臼を背側に回転させた後に専用の骨プレートを使用して固定を行います。JPSと同様に寛骨臼が大腿骨頭を覆うようになります。

③股関節全置換術(total hop replacement  THR) 重度骨関節炎症例

 当院では、HDによる跛行・疼痛・後肢機能やQOLの低下がみられた場合にはTHRを提案しています。予後は良好からきわめて良好であり、合併症も3.8-11%と言われています。

④大腿骨頭骨頸切除術(femoral head and neck osteotomy FHO) 救済手術 

 関節の一部である骨頭および骨頸を除去することにより、寛骨臼との接触をなくし疼痛の原因を除外する方法です。

●骨盤骨折

原因:交通事故によるものが最も多く、その際には多発性全身性外傷を伴っています。そのため、整形外科損傷の治療よりもそれに対する対処が優先されることがあります。具体的には骨盤部外傷症例の39%は尿路外傷(膀胱破裂や尿道破裂など)を生じたり、肝臓や脾臓からの出血を認めることもあります。

治療:外科的修復を必要とする骨盤部の3つの主な損傷は、仙腸関節の骨折脱臼、腸骨骨折、寛骨臼骨折です。使用するインプラントはピンやワイヤー、骨プレートです。

●股関節脱臼

股関節脱臼は、通常外傷や重度のHDによって起こりますが、その大半は頭背側方向への脱臼します(約75%)。整形外科的検査およびレントゲン検査にて診断します。

治療は、初発であれば鎮静下にて非観血的整復およびエーマースリング(8の字包帯)にて2週間管理しますが、再脱臼率は50%以上であることから、外科手術を実施するケースは少なくありません。

外科手術は、スローカムスリング法やトグルピン法、創外固定器を使用した固定などを行いますが、重度HDの場合には、FHOを実施することもあります。

●大腿骨頸部骨折

当院では、猫や小型犬では3ピン法を、中型犬以上はラグスクリューを併用して固定を行います。FHOは整復不可能な骨折の場合にのみ実施しています。

●骨端板骨折(大腿骨・脛骨)

骨格が未熟な動物では、骨端板(成長板)が靭帯や骨よりも外力に対する抵抗性が低いため、脱臼や靭帯断裂よりも骨端板骨折が生じやすいと言われております。この骨折はSalter-Harris分類によってⅠ~Ⅵ型まで分類されます。

骨端板骨折の治癒は早く、3週間程度でインプラントを除去します。固定が強すぎたり、インプラント除去が遅れると成長板が閉鎖して、足の変形や脚長差が認められることがあります。

●膝蓋骨脱臼(内方・外方)

膝蓋骨脱臼は、読んで字のごとく膝のお皿が定位置にある太ももの骨の溝(大腿骨滑車溝)から内側(内方)もしくは外側(外方)に外れる(脱臼する)疾患です。

原因:先天性と外傷性に分類されますが、先天性は根本的な原因は未解明となっていますが、①大腿四頭筋群の発達障害②大腿骨頭・骨頸部の角度異常③膝蓋骨高位(patella alta)などが発生要因として示唆されています。

重症度分類:膝蓋骨脱臼は、脱臼の程度により4段階にグレード分けされています。

グレードⅠ:膝蓋骨は徒手により脱臼するが、自然に滑車溝に戻る

グレードⅡ:膝蓋骨は膝関節の屈伸により容易に脱臼するが自然に滑車溝に戻り、通常は正常位にある

グレードⅢ:膝蓋骨は膝関節の屈伸により脱臼し、ほぼ常に脱臼したままであるが徒手整復が可能である

グレードⅣ:膝蓋骨は脱臼した状態にあり徒手整復できない。

治療:当院では、グレードⅡで症状が認められる、もしくはグレードⅢ以上の場合に外科手術を実施しています。手術は、脱臼のグレード、骨格の変形の有無、動物の年齢によっていくつかの術式を組み合わせて行います。

●前十字靭帯断裂

前十字靭帯は膝関節の中にある靭帯で、現在では少なくとも75%の症例で膝関節の変形性変化が靭帯断裂の原因であると考えられています。この変形性変化と関連しているのは①加齢②肥満③遺伝④性別⑤膝蓋骨内方脱臼と考えられています。

好発犬種:小型犬ではヨークシャーテリア、トイプードル、中型犬では柴犬、アメリカンコッカースパニエル、大型犬ではゴールデンレトリーバー、ラブラドールレトリーバー、バーニーズマウンテンドッグなどに多いとされています。

症状:靭帯が切れた直後は関節炎により挙上や跛行が認められますが、膝関節は不安定ながらも徐々に足を着いて歩けるようになります。しかし、症例の1/2で軟骨離断によって疼痛と跛行が悪化することもあります。

診断:病歴と整形外科的検査に基づいて行います。レントゲン検査や超音波検査、関節鏡検査により確定診断を行います。整形外科的検査では、関節の腫脹、前方引き出し兆候や脛骨圧迫試験が陽性か、屈曲時のクリック音がないかを確認します。

治療:

7kg以下:受傷した犬の20-25%では、内科的治療(ケージレスト、運動制限、体重管理、NSAIDsの投与)を4-6週間継続することで正常な歩行へ回復しますが、改善がみられない場合には外科療法を実施します。

7kg以上:外科手術による膝関節の安定化が推奨されます。

術式:

①脛骨高平部水平化骨切り術(tibial plateau levelling osteotomy  TPLO)

脛骨高平部の傾斜を変化させることにより、脛骨が前方に変位する力を中和して動的安定化を行う術式です。長期予後も良く、早期の負重が期待できます。当院では5kg以上で活動性が高い犬では、TPLOを推奨しています。

②関節外制動術(lateral femorotibial suture  LFS)

前十字靭帯と同様のベクトルになるように脛骨および大腿骨に人工靭帯を用いて関節外から固定を行い関節の線維化を促す術式です。主に小型犬や、活動性の低い犬に実施しています。

●足根関節脱臼

下腿果部の骨折や側副靭帯の完全断裂や離断によって亜脱臼や脱臼を起こします。治療は、①人工糸やスクリュー、骨孔を利用して靭帯再建術②創外固定や骨プレートを用いた関節固定術を症例に応じて実施しています。

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